赤荻研究室

地球は何でできているのか
赤荻 正樹教授

 近年の各種観測技術の進歩は、目を見張るものがあります。月や火星などはおろか、はるか遠くにある恒星でさえ、それらにどのような物質が含まれているか、かなり詳しくわかるようになってきています。

 しかしその一方で、我々の足元の地球がいったい何からできているのかは、実はまだ完全にわかっているわけではありません。地球の地下深くは、想像を絶する高温と高圧の世界であり、岩石も地上とは全く違う姿、違う構造をとっています。

 赤荻正樹教授は、特殊な研究機器を駆使することで、この高温高圧状態を研究室内に再現し、地下深くの世界に何があるのかを追求しています。

赤荻正樹教授。右側は高圧実験のための装置

未解明の地下世界

――地球の地下深くに何があるか、解明されていないというのは意外です。

赤荻 地球の半径6370kmに対して、これまで人類が掘った最も深い穴は深さ12km少々ですから、ほんの表層を見ただけなのです。それより地下深くにあるものを持ってくることはできませんので、実験でその状態を再現して、どのような物質ができているか調べてみるわけです。

――地下深くを再現した条件とは、どのようなものですか?

赤荻 私達の実験室にある装置は、1~2mmほどの試料に対して最大で30万気圧ほどの圧力をかけて2500℃程度まで温度を上げることができます。これは地下1000kmくらいまでの条件に相当します。こうした条件下では岩石をつくっている鉱物の結晶構造も通常とは違ったものになりますので、どのくらいの温度や圧力でどのような構造に変化するかを調べています。

試料に高圧をかけるための器具「アンビル」。高い圧力を実現するため、様々な材質・形状のものを工夫して用いる

――地下深くでは、原子の種類や割合が同じであっても違う物質になってしまうのですね。こうしたデータを積み重ねることで、地球内部の構造がわかるということでしょうか。

赤荻 私達の出したこうした実験結果と、他の研究者が調べた地震波の伝わり方などのデータを突き合わせることで、地下深くの構造が少しずつわかってきています。

――地道な積み重ねですが、非常に重要な研究ですね。その他にはどういった研究を?

赤荻 人工的に、全く新しい無機物質を創り出す研究も行っています。既存の鉱物にはない元素を組み合わせて、高温高圧をかけることなどによって、新物質が作れるのです。こうした物質は、今までにない性能を持った材料の開発にもつながります。たとえばペロブスカイトという鉱物をもとに創られた物質は、様々な機能性材料に応用が可能であって、現在大きな注目を浴びています。

――自然界にあるものの解明ばかりではなく、全く新しい物質を創り出し、研究対象とできるのは化学分野の大きな魅力ですね。

鉱物の名前

――ところで先生の研究対象である、鉱物の名前というのはどのように決まるのですか?アレキサンドライトやカルサイト(方解石)のように、語尾に「イト」がつくものが多いようですが。

赤荻 新鉱物を発見した人が、国際鉱物学連合にそのデータを提出し、今までにないものと認められれば、その人に命名権が与えられます。鉱物が発見された地名や、研究者の名前に、「-ite」をつけたものが多いです。たとえば先ほど出てきたペロブスカイトは、鉱物学者のペロブスキーにちなんだものです。

――もしかして、赤荻先生の名にちなんだ鉱物もありますか?

赤荻 実は2010年に、ドイツの研究者が見つけた新鉱物に「アカオギアイト」(akaogiite)という名をつけてくれました。二酸化チタンに、隕石の衝突による高温高圧が加わってできた鉱物です。

――それは非常に大きな名誉ですね。やはり高圧でできる鉱物の研究に携わってきた、先生の業績を讃えたものでしょうか?

赤荻 30種類ほどある高圧鉱物の中で、日本人の名がついたものでは3例目だそうです。彼がなぜ、私の名をつけようと思ったのかはわかりませんけれども(笑)。

学生のみなさんへ

――先生が研究の中で嬉しいと思うのは、どのようなときでしょうか。

赤荻 やはり予想外の現象や物質を見つけた時でしょうか。特に、学生が熱心に取り組み、こちらの予測を超えるものを発見した時ですね。「これは君が世界で初めてみつけたものだよ」と学生を鼓舞して、奮い立たせるのも教員の大きな役目です。

実験中の学生

――こういう学生に来てほしいというのはありますか?

赤荻 やはり実験が好きな人ですね。研究というものは粘り強く取り組む必要がありますので、実験が好きなことは重要です。授業の成績がそれほど良くなくても、熱心に実験に取り組む人が優れた結果を出すことも、多くあります。

――卒業した学生はどのような分野で活躍されていますか?

赤荻 学部卒、修士卒の人は、電機メーカー、金属やセラミックスの会社、コンピュータ関連の企業に就職する人が多いですね。博士課程に進学した人は、ほとんどが研究職に進んでいます。

――これから大学に入ろうとする高校生のみなさんに、メッセージをお願いします。

赤荻 偏差値や他人の意見より、自分の適性を考え、将来やりたいことを踏まえて進路を選ぶということでしょうか。ただし、興味の方向は変わっていくもので、私自身も地学分野から研究を始めましたが、化学の分野に移ってゆきました。なので、若いうちに教養になるような本、生き方の基礎になるような本を読んでおくのがよいと思います。

――おすすめの本はありますか?

赤荻 昔から知られた本で、「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎、岩波文庫)などはよい本だと思います。また最近出た本では、細胞生物学者で歌人でもある永田和宏先生の対談集「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」(正・続、文春新書)も興味を持って読めるのではないかと思います。スマートフォンでやり取りされる断片的な情報も面白いでしょうが、とくに若いうちは、まとまった考えに従って書かれた、自分の骨格になるような本を手にしてほしいと思います。

――本日はどうもありがとうございました。

 

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